小さな頃から、本を読むことは呼吸をすることに似ていた。2歳の時から本が好きだったよ、と母は言う。小学生の頃は学校の図書室に通い詰めた。『本当にあったこわい話』シリーズ、『ズッコケ三人組』シリーズ、『なん者ひなた丸』シリーズ、『わかったさんの○○』シリーズとか好きだったな、懐かしい。
小学校高学年になって母親に勧められた赤川次郎を読んでからは、ミステリにずぶずぶとはまっていく。休日は父親に連れられてブックオフの文庫本100円コーナーをうろうろしたり。近所の図書館では、あ行の作家からひたすら読み進めていった。愛川晶、赤川次郎、阿刀田高、姉小路祐、我孫子武丸、有栖川有栖、綾辻行人、泡坂妻夫…と「あ」から始まる作家だけでも面白いミステリを書く方が大勢いた。
作家には、小学5年生ぐらいの時からなりたいと思っていた。同じ頃、自作小説を公開するホームページをGaiaXのサービスで作成し、少ししてからジオシティーズに移転した。あの頃の記憶はやたら甘酸っぱい。たくさん片想いをして、身体の中でぐるぐると渦巻く気持ちをWin98搭載の菓子箱みたいなノートパソコンにぶつけた。飽き性なのでなかなか長編がかけず、短編恋愛小説ばかりをコンテストに投稿したりしていた。鳴かず飛ばずだったけれど。
あの頃の読書体験は、もう戻ってはこない特別なものだ。最近の私は冒険をしない。本は借りるのではなく買うものになり、よく知らない作家の小説を手当たり次第に読んでいくようなことはしなくなった。はずれを引いた時のお金と時間が惜しいから、大好きな作家の新作だけを手に取る。京極夏彦、吉田修一、本多孝好、中村航、山田詠美、三浦しをん、有川浩、島本理生、辻村深月、村山由佳など。切ない恋愛ものがたまらなく好き。
小説以外の本は、あまりジャンルを絞らず読もうと心がけている。不思議なもので、一見まったく共通点のなさそうな本を続けて読んだ時に同じトピックが取り上げられたりすることがあったりして、そういう時はぞぞぞ…!と興奮する。乱読、多読にはkindleが便利。何冊か同時並行で読むことが多いのだけれど、そんな時にも荷物がかさばらない。
今年の7月から8月にかけては、夏の読書週間と題して久しぶりに本を読みふけっていた。その時に読んで面白かった本をいくつか挙げてみようと思う。
日本人へ―リーダー篇 塩野七生
塩野七生さんは、知識人、と呼ぶのがぴったりの素敵な女性で憧れる。古代ローマの頃から人間って変わらないのね、と不思議な気持ちに。
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 田端信太郎
メディアの作り手が考えなければならないことが、説得力に溢れた文章で記されている。これまで多数のメディアに関わってこられたからこそ書ける、大変刺激に満ちた本。田端信太郎さんの書かれていることを自分でも試してみようと、読後にブログを新しく立ち上げてしまった。
ぼくらの頭脳の鍛え方 立花隆・佐藤優
高校生の頃から立花さんにずっと憧れている。この二人の読書量と記憶力、そして会話の中で最適な記憶を取り出してみせる様子は人間技とは思えない。向上心を刺激される、濃厚な対談。
民族という名の宗教―人をまとめる原理・排除する原理 なだいなだ
「民族」とは何か、なんて考えてみたこともなかった。1冊に渡る深い思考実験を通して、考えることの面白さを教えてくれる。小難しい話を対話形式で非常に平易に書いているので、文章の勉強にもなる。
彼女たちの売春 荻上チキ
昔『ウェブ炎上』を読んでから好きになった荻上チキさんの著作を、Kindleで購入。「ワリキリ」が日常と化している女性たちへのインタビューは、一つひとつが生々しい。「ワリキリ」を始めた理由も抜けられない理由も、当事者個人の問題のみならず、貧困といった社会問題と深く結びついていることがよくわかる。
黒田如水 吉川英治
Kindleで0円だったのでダウンロードしてみた。9年ぶりに読んだ吉川英治さんの著作は、変わらず激しく、人を熱くさせる。泣いたよ泣いた。これを読んで黒田官兵衛を好きにならない人はいないと思う。
夏への扉 ロバート・A.ハインライン/福島 正実
こちらもKindleで購入。いたるところに張り巡らされた伏線が鮮やかに回収されていくSFミステリ。読み終わるのが惜しかった。まだ読んでいない人が羨ましいぐらい。1956年に書かれた小説らしいのだけど、名作と呼ばれるものって何十年経っても色褪せないのね、と惚れ惚れする。
夏に読んだおすすめ本の紹介は以上。
2009年からはずっと、読んだ本はブクログに登録している。ここからは、ブクログで★5をつけている本をぺこぺこと並べて、この記事を終わりにしようと思う。
童話物語 向山貴彦・宮山 香里
とても切ないファンタジー大作。そして、最高のツンデレ小説。小学生の頃に出会って、何度も何度も読んだ。きっと今読んでも泣いてしまうと思う。思い出すだけで胸が苦しくなる。
薄紅天女 荻原規子
荻原規子さんの勾玉三部作の中では、薄紅天女が一番好き。阿高に心を奪われてしまった。小学校から帰ってくると、お気に入りのシーンを開いてよく音読していた。昔使っていた「鈴」というハンドルネームの拝借元もここ。荻原さんが書く恋愛はたまらなく甘酸っぱい。
絶対、最強の恋のうた 中村航
屍鬼 小野不由美
中学の時の読書感想文はこれだった。アニメ化もしたミステリで、文庫は1巻から5巻まである。私は夏野というお兄さんが大好きで大好きで、夏野が登場するところばかり繰り返し読んだ。シリアスで読み進めるにつれて逃げ場のなくなるような小説。絶望に包まれていく様子がなんだか逆に清々しい。
MISSING 本多孝好
ひんやり切ない恋愛の短編集。本多孝好さんは長編より短編の方が好きかも。もっと読みたい、という時に終わってしまうから、いつも名残惜しいような気持ちで本を閉じる。
子どもたちは夜と遊ぶ 辻村深月
辻村深月さんの著作で一番好きなのはこれ。上下巻。どろどろと重くて悲しくて、それでもページをめくる手が止まらない。辻村さんらしい、読者を翻弄するトリック。淡い恋。結末を知った上で、もう一度読みたくなる。
キズナのマーケティング 池田紀行
もう、少し古い本になってしまったけれど、ソーシャルマーケティングが従来のマーケティングとどのように違うのかということに関する知見をたくさん与えてくれた良書。手元に置いておきたい。
ウェブ進化論 梅田望夫
oichiくんも挙げていた本。大学の卒業論文の参考文献として読んだ。出版されて5年後に出会ったのだけれど、書かれていることはまったく色褪せていなかった。梅田望夫さんの先見性に驚く。
ウェブ時代をゆく 梅田望夫
ウェブ進化論が面白かったのでこちらも読んでみた。自分の進路に大きな影響を与えてくれた。梅田さんのおかげでITへの愛が増したのは間違いない。
ジンメル・つながりの哲学 菅野仁
社会は人々の相互作用からなる、と論じた社会学者ジンメルの思想をわかりやすく解説した本。ただの入門書ではなく、菅野仁さんの誠実さが文章の端々に表れ、読み物として面白い。具体例も豊富で理解しやすかった。twitterに感想を書いたら、菅野さんから直接リプライをいただけて嬉しかった、という思い出もある本。
自我の起原―愛とエゴイズムの動物社会学 真木悠介
結局自分って、人間の種としての本能に操られているだけなんじゃないかとうじうじ悩んでいた大学生の私に、真木悠介さんなりの見方で解答を与えてくれた本。自分のちっぽけな悩みなんて、大抵誰かがすでに解決してくれているのだな、と安心した。様々な生物の生態を参考にしながら、「種全体を守るために自分の命を犠牲にできるか」など、「利己」「利他」を考察している。
ランプコントロール 大崎善生
大崎善生さんらしい骨太な恋愛小説。感情がぐるぐるとかき回され、寝るのも忘れて読みふけった。その頃私が直面していた「別れ」と、しっかり向き合うきっかけを与えてくれた本。海外で過ごす休日のなんでもないようなシーンが美しくてずっと印象に残っている。
アンダースタンド・メイビー 島本理生
上下巻を通して、主人公のくろえと共に何年も過ごした。島本理生さんは共感を呼ぶのが上手だと思う。私の年齢がそこそこ近いからかな?昔の恋愛を思い出して、苦しくなってしまった。
他にも紹介したい本はたくさんあるのだけど、きりがないのでここでおしまい。興味が似通っている方はぜひブクログでお友達になっていただけると嬉しいです。
しおりのほんだな/booklog