きみとリトル・ダンサー

こんにちは。日曜担当kimixです。

今週はフリーテーマ、ということなのでわたしの大好きな映画を紹介したいと思います。ちなみにガッツリ内容も説明しているのでネタバレが嫌いな方は今日の日記はスルーした方がいいかも…?そんなわけではじまります、本日のGOOD AT TOKYO。

「リトル・ダンサー」

『リトル・ダンサー』
(原題『BILLY ELLIOT』2000年英国作品)

あらすじ

舞台は1984年の英国北東部の炭坑町、ダーラム。11歳のビリーは炭鉱労働者の父と少し歳が離れた兄、そしてボケが始まっているお婆ちゃんと炭坑住宅に暮らしている。ママは去年、亡くなった。イギリス下層階級における少年たちの「少年時代」は短い。義務教育課程を終えたらすぐに職に就かざるを得ない。自由な少年でいられる時間は本当に短い。

少年たちは放課後をサッカーかボクシングの練習に費やし、男になる用意をする。だが、この町の二人の少年だけは殴り合うスポーツに全く興味がなかった。一人はビリー。もう一人はマイケル。

ある日、ボクシングの練習をしている町のホールにウィルキンソン夫人のバレエ教室が引っ越して来る。ビリーはボクシングの練習中もバレエのためのピアノの音が聞こえてくると、我知らず身体が音楽に合わせて踊りだしてしまう。そして、ついには女の子の中に混じってバレエのレッスンを受け始める。ウィルキンソン夫人は少年の中に「踊らずにはいられない天性の何かがある」ことに気付いてしまうのだ…

この作品に出会ったのはたしかわたしが中学生だったとき。まだ夢を追いかけるとかもよくわからず、部活動のテニスに打ち込んでいたっけ。

割と忙しい部活だったから平日も朝早く練習。そして晩遅くまでボールを追いかけて、土日も休みなくラケットを握りしめて素振りをしてた。団体戦でも個人戦でも一応レギュラーに入って大会に出ることができていたけど、なんだかなぁという毎日。スポーツは嫌いじゃないけど特別好きでもなかったし、友達がいたからなんとなく部活をやっていたの。

そんなわたしの唯一の楽しみは、家で晩ごはんを食べ終わった後に絵を描くとか、ハリー・ポッターをはじめとする児童書を読むこと、そしてたまの休みの日にTSUTAYAで借りてきたちょっとマイナーな洋画を観ること。(メジャーな映画を観ることがなんとなく嫌だった)


英国の古い感覚では「ダンサーは女のやる仕事。あるいはゲイの天職」だ。

ビリーの父にしてみれば息子がバレエのレッスンを受けるなんてもっての外の出来事だった。女の子に混じってレッスンを受けている息子を見て、父は無理やり家に連れ戻す。子供の時から炭坑町に育ち、故郷以外の土地を知らない父。因習に縛られたその頭では息子の考えは理解出来ないのだが、心は必死で息子を解ろうとしている。だから、最後のひと言だけは飲み込んでいる。我慢できずにビリーは叫んでしまうのだ。「オカマじゃなくたってバレエが好きな奴はいる!」

ウィルキンソン夫人はこのダイヤの原石を必死で磨こうとする。人目に付かないよう早朝のボクシング教室を使ってレッスンを施す。天賦の才は徐々に輝きを見せ始める。「この子だけはこの炭坑町で一生を終わらせたくない」だが、ロイヤル・バレエ学校の出張試験が近づいたある日。炭坑労組と警官隊が激突して、兄が捕らえられたことからビリーは受験を断念せざるを得なくなる。

ビリーは炭坑町の、ひいては英国下層階級の閉塞状況の中でもがき苦しむ。踏む地団駄。蹴る塀。這い昇ろうとする壁。それはそのままダンスになって行く。少年は逃げるように家を飛び出し、狂ったようにタップを踏む。

うちの中学は1学年400人近くいるマンモス学校。その中でもわたしは勉強も運動も中の中。学校によくいる「平均的」な生徒だった。

絵を描くことは好きでもみんなを驚かせるような画力は持ち合わせていなかったし、手先もとても不器用だったから美術で5をとってたのか?と言われるとそうでもない。本当に目立たない普通の人だったと思う。

なんとなく過ぎていく日々がつまらなくて刺激が欲しくてモヤモヤしていたとき、なんとなーくな成績でもとりあえず県内でも有名なスポーツ高校に進学することができた。(とくにバリバリ運動する気はなかったのでわたしは普通科ですが…)家から学校まで電車で1時間半。決して近くはないけれど、それでもなぜかその高校に行きたいって思ったの。入ってみたらそりゃあもうビックリの連続。

それこそ全国レベルの運動生徒ばかりが集まっていて、ずっと平均的な生徒だったわたしには強すぎる刺激だらけ。みんな自分の夢や目標を追いかけていて、毎日がキラキラしていて、勝っても負けても1軍でも2軍でも笑い合っている日々。

わたしは部活をやっていなかったけど(基本的に推薦でとってしまうので部員を募集してなかった笑)(正確には”クッキング愛好会”という部活に入っていたけどその話はまた今度…)、クラスも学年もみんなすっごく仲良くて本当に素敵な青春時代を送らせて頂きました。サッカー部、バレー部、野球部、バスケ部、吹奏楽部…みんなの全国大会の応援ばっかりいってたなぁ。

とっても楽しかった反面、わたしはめちゃめちゃ悔しかった。なんで同い年なのにわたしは応援してばかりなんだろうって。わたしもキラキラしたいし、やりたいことやって、心から楽しい!良い人生だった!って言いたいって。すっごい悔しかった。

Like Electricity

「リトル・ダンサー」の主人公ビリーには天才といえる才能はない。でも「やりたい」って気持ちだけで勝手にからだが動いちゃう。その気持ちはすごくよくわかる。輝く同世代の人をみていると、わたしも何かせずにはいられなくなる。

居ても立ってもいられなくなったわたしは、独学ながらにも夜な夜なhtmlやcssを学んだり、絵を描いたり、WEBデザインをしてみたりして、こっそりホームページを作っていた。

毎日更新していたBLOGはそれなりに読者もついて、今でもTwitterをフォローしてくれている人もいる。そのときにWEBって楽しいなぁ、人と繋がれる場所なんだなぁと初心者ながらにネットの壮大さに感動していた。(でもPCが得意というのはなんだかオタク文化のようで誰にも言えなかった)

高校生になって見返した「リトル・ダンサー」に、中学生のときに抱いた感想とはまた違うなにか感じたんだ。後々気づくことだけど、寝る間も惜しんでやれること・やりたいことこそが「本当に好きなこと」なのかもしれない。

高校を卒業したら今度はわたしの興味のある分野でキラキラ輝ける場所に進もう。そう思っていたんだけど、家族の反対やいろんなことが重なって一度デザインの道を挫折。

大学に進学してもなんとなく刺激のない日々。今でもよく遊ぶ仲良しの友達もできたし、全く興味のない分野の勉強じゃなかったし毎日楽しいんだけど、でもわたしが求めてたのはこれじゃないんだよなぁってまたモヤモヤ。

学校、勉強、遊び、バイト… なんかちがう。これじゃない。

もうデザインの道は絶たれたんだから他の道を探そう…って努力したけどどうも上手くいかず。20歳の誕生日に自分へのプレゼントとして買ったパソコンにまたもや夜な夜な向かい合って、気がつけばバイトから帰宅して毎朝4時頃までずっとコラージュを作っていた。止まらなかった。

ビリーがロイヤル・バレエ学校の試験を受けたとき、面接でこう答えている。

「ビリー、踊っているときはどんな気分?」
「さあ…。いい気分です。最初は体が堅いけど踊り出すと何もかも忘れて…すべてが消えます、何もかも。自分が変わって体の中に炎が…。宙を飛んでいる気分になります。鳥のように。電気のように。………。そう、電気のように」

今、わたしがいる場所

大学生になってこの映画を見返したときビリーにとても共感したし、反対される環境にいながらも最終的には応援してくれる家族がとても羨ましいと思ってしまったのを覚えてる。

夜な夜な作品を大量に作りつづけた甲斐があってか、その後いろんなところにお誘いいただき雑誌のお仕事やメディアへの出演をさせていただく。このままトントン拍子にいくのかな!自分の夢がついに叶うのかな!なんて考えてた矢先、大学卒業間近にまたちょっと大きな出来事が起きて泣く泣くデザインの道を諦めることに。

そうやって2度目の挫折を味わうんだけど、数年の紆余曲折を経て結局はわたしは今、ここに立っている。周りの人に支えられて、いつの間にか、未熟ながらもイラストレーター・デザイナー、そしてアートディレクターとしてお仕事をいただく身になっている。

わたしは今、今までで一番キラキラした場所にいると思っている。

この映画のラストは、主人公ビリーが大人になって自分の夢を叶えて舞台に立つ、というところで終わっているのだけどそれが描かれすぎていないのがすごく良いと思う。

わたしはハッピーエンドよりバッドエンドが好きなかなりのひねくれ者だけどこのハッピーエンドはすごく好きだ。
全てがリアルなんだ。

天才だったね!努力したね!チャンチャン、というストーリーじゃない。全てが最後の飛躍に込められているんじゃないかなぁ。

I can’t live without you.

「I miss you…」

余談だけど、最後にお兄さんが目に涙を浮かべながらビリーを送り出すシーンでのこの言葉。これを聞いて「寂しいよ…」って「アイ・ミス・ユー」って言うんだ!と知った12歳のわたし。なんだか切ないこの印象が頭から抜けない。

(T.REXも曲も逸品だわ)

とっても長くなってしまったし、ちょっと小っ恥ずかしいことも書いてあるけど、ワイン片手にパプリカの炒めものをつまんで割りと酔っ払いながらパソコンに向かっているのでどうか大目に見て欲しい。

そしてこの映画を観ていない人は絶対に観て欲しいし、観た人はぜひもう一度観て欲しい。

きっといま観返してみると感じることもまた変わるんじゃないかなぁ。そんな感じ。わたしの分岐点のそばにいつもいてくれた映画、「リトル・ダンサー」おすすめです。

さて、明日はoichiくんです。「GOOD AT TOKYO」のみんなの好きな映画も知りたいな〜。
それでは来週もお楽しみに!kimixでした。チャンチャン。