あざやかな夏

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夏が来ると、「どきどき」が恋しくなる。近いようで遠い距離、どこに続くかわからない夜の道、手持ち花火のはじける音にかぶさるような波の音、熱帯夜に時折吹く風がそっと運んでくる夏の匂い。

冬は家にこもって部屋の隅で丸まっている私も、夏になれば裸で外に駆け出したくなる。日常を離れて、遠いところへ出かけたくなる。スーツを着て電車に乗り込みながら、隣の家族が引いているキャリーバッグにこっそりしがみついてどこかへ連れて行ってもらおうかしら、と思う。

夏の写真を見返すのが好き。暑さや、音や匂いの記憶、その日その瞬間の感情の記憶がありありと呼び起こされる。夏という季節は、そういった記憶がなぜか鮮明で、私の頭の中はいつだって夏の思い出でいっぱいなのだ。

暗闇の中、丘をひたすら上に登って、ひらけた場所から望んだ四日市の夜景。あやしく光る、無機質な工場。ありきたりだけれど、私の悲しみなんてちっぽけだと思った夜。

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京都の空に広がる、大きな入道雲。隙間から日差しがじりじりと照りつける。あまりの暑さに干からびてしまいそう。小さな椅子に、並んで腰かけた。

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足元もよく見えない夜の河原沿いを、皆で一列になって歩いた。暗闇の中、くるくると回した手持ち花火から色とりどりの光がこぼれる。

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これまでの自分と決別したくて、必死で歩を進めた一人旅。福岡の洒落た町並みに降る雨。家族へのお土産を探した朝の市場。

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熊本の寂れた公園。小雨が降る中、夢中で遊具の写真を撮った。

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愛媛へ向かう午前5時過ぎの朝焼け。しまなみ海道の澄んだ海、どこまでも続くブルーライン。足がぱんぱんになるほど、全速力でペダルを漕いだ。とても贅沢な、一人きりの80キロメートル。

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夜の海に浮かぶ厳島神社。弥山から眺める広い海。東京を出発してから一週間が経ち、「悲しいこと」が「かつて悲しかったこと」に変わり始めた去年の夏の終わり。

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今年大原で見た虹。大きく海の上にかかった。気がつけば、「かつて悲しかったこと」は「幸せなこと」で塗りつぶされていた。

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また来年、あざやかな夏の景色に出会えますように。しばらく、さようなら。